【報告】染めものワークショップ・夏〜大地を感じる、大地で染める、ベンガラ染め体験〜
田植えがはじまり、雄々しい緑に包まれはじめたやさとの夏。
「土ってなんでしょうか。」
この問いかけからワークショップは始まりました。
大地を覆っているもので〜、野菜を育てたりしていて〜…いざ説明しようと思うと非常に曖昧な認識しかないことに気づきます。 土は鉱物、動植物とそれらの死骸などの有機物、空気など色々なもので構成されています。幾時代も腐敗と発酵が繰り返され、堆積してできたのがいまの土。スケールが大きいですね。
さらに、土という言葉の意味や、土をとりまく環境についても考えました。 切りはなせない問題の一つが放射性物質です。野菜には遷移しないものの、震災での原発事故以降、少なからぬ影響がこのあたりにもありました。線量に対する、チェルノブイリの基準の設け方を参考にしながら、土や私たちの暮らす大地を改めて見直す機会になりました。
夕方には開拓地へ。ここの土でも染めるのです!
ヨモギ染めの頃とは違い、2年目の田圃の稲がすくすく育ち、元来の谷津田の景色を取り戻しつつありました。
ここを再開拓した農場のスタッフの皆さん、本当にすごいです。。。
開拓地の土は事前に採取し、天日干ししてありましたが、みんなでこの土地に来たことで、土との繋がりを一層深めたのでした。
美味しい夕食を終えたあとは、1日のしめくくり。
陰陽五行と土・土用についてのお話です。
放出するエネルギーのある陰と溜め込む引き締めるエネルギーのある陽。
季節や一日の流れも、陰陽が巡ることでその特徴を説明することができます。
これに五行の考え方を合わせることで、身体や感情、取り込むべき栄養などを伺い知ることができます。
この中でも土(という概念、というべきかもしれません。)の存在は大きく、土用の期間は季節の変わり目の調節をする役割があります。
芽吹きの春から盛りの夏へ、実りの秋から寒さの冬へ、過去を省み、未来へ変化していくための大切な時間だそうです。
2日目はいよいよ土染め本番。
まずは土をふるいにかけ、乾燥の度合いを強めるため、炒ります。
続いて乳鉢ですり潰し、さらに粒子を細かくします。
ある程度潰したら、ご汁(大豆をすり潰したものを濾した液)を少しずつ入れて柔らかくします。これで顔料の完成です。 土によって随分違いがありますね!
顔料を水に溶き、下処理を施した布を入れて一気に染め上げます。
草木染めとの違いはここ。
段取り9割で、すぐに染まってしまうのです!緊張の一瞬!
干してみると…こんなに鮮やか!
でもなんというか、地に足のついたどっしりした色ですよね。
2日間を通して、参加者間の対話の時間を設けたのも今回のワークショップの特徴でした。
自分の今の状態、感じていることに意識を向けながら新しい知識を吸収するのは、中々タフな作業でしたが、いわばこの耕しのお陰で、染めの土壌が育まれ、染める作業がびっくりするくらいスムーズにできたのでした。
無防備でいること。
正直でいること。
ジャッジをしないこと。
気楽にやること。
色々な気づきをいただきました。
土染めは最古の染めものといわれます。
自然界のものではあるものの、実は当初、草木染めとの繋がりについてあまり意識していませんでした。
冨田さんから「土が植物を育み、またそれが朽ちたもので構成されていることを思えば、草木染めの根源を辿ることになる」と教えていただいたことで、今後染めものをより深く探求できそうです。
土のあるところならどこでも、つまり世界中どこでもできる土染め。
地理的なスケールの大きさと、色々な領域を超えて繋がるテーマの大きさ。
土について、これからも考えていきたいと思いました。
ご参加くださった皆さん、講師の冨田さん、ありがとうございました!
(わ)
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